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週刊 横濱80’s

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2017年 07月 30日

本町ビルの雁首付き通風筒

 その昔、南仲通を挟んで県立博物館の隣りに本町ビルという昭和4年に帝国火災保険横浜支店ビルとして建設されたビルがあったことはこちらで触れているので詳しくはリンクをクリックして頂くことにして以下省略。

 このビルはつい最近まで現存していたので、ネット上に様々な写真が上がっていますが注目されているのは、ニューヨーク的な外付けの非常階段。

 しかし私が気になっていたのは、非常階段の下にあった昔の船に取り付けられていた雁首付きの通風筒↓。

本町ビルの雁首付き通風筒_c0247059_23435825.jpg


 なにやら巷の噂では、この通風筒は、取り壊し寸前の最終形態の時にはすでに撤去されていたらしいのですが、「なぜにしてビルに船の通風筒が?」という疑問が撮影時からず~っとあったワケです。

 ちなみに↓は山下公園に係留されている氷川丸の通風筒。

本町ビルの雁首付き通風筒_c0247059_23465317.jpg


 で話を元に戻しますと、どう見てもこの通風筒、船舶用の物を流用したらしいのは明らかなうえに後付け感がないという代物↓。

本町ビルの雁首付き通風筒_c0247059_23441212.jpg


 仮に、このビルが建てられた当時から存在していたとしたら、「なぜこんな物を?」と長年の疑問だったのですが、横浜市立図書館デジタルアーカイブ"都市横浜の記憶"で実業之横浜社が昭和5年5月15日に発行した雑誌「大横浜」第25巻 第3号 春期特大号を見ていたら、「ビルディング素描」という震災復興で横浜中心部に建設されたビルを紹介したページにこんな記述が。

以下、原文のまま引用
本町ビル(帝国火災ビルディング)
 元の鈴木商店の空き地と正金銀行脇とに挟る帝国火災保険会社の経営する本町ビルディングは地下室と六階の可なり廣い建物である。第一階の弁天橋に向いた所が鎧戸が下りているので何となく景気が悪いが、地下室には最近食堂と酒場トップが帝国食堂の後を受けて開業してをる。一寸覗いて見たら近代歓楽境の響と香ひが高い。まだ知らない人は一度は吸ひ込まれて見るがよからう。
 このビルディングはあらゆる設備が整頓して居るが各階中央の廊下とエレベーターの昇降口が薄暗いのは玉に瑕であらう。二階は帝国火災保険出張所、平和火災海上保険会社支店、朝日スレート販売会社、法学士内田修一法律事務所、大北火災海上保険株式会社支店の事務所によって占められ、三階は郡是製糸株式会社があるだけで、半分以上はあいている。



 当時のこのてのビルは、「暖房完備」とわざわざことわるくらいなので、当然のこと冷房なんか無いのが当たり前。そうなると地下に食堂と飲み屋が入っていたとすると、夏場は熱気がこもってさぞ不快だっただろうことは想像に難しく無く、そうなると地下の換気の為に取り付けられていたのだろう……と思われます。

 でもあの本町ビルの地下が建設当時は"近代歓楽境"だったとは……。

本町ビルの雁首付き通風筒_c0247059_2344253.jpg
 




 

by yokohama80s | 2017-07-30 12:00 | 関内地区


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