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週刊 横濱80’s

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2012年 09月 16日

横浜税関西門

本土側から新港埠頭へ行くには、桜木町駅方向から、または馬車道から万国橋を渡るルートと、関内駅南口からみなと大通りを直進して海岸通りを横切って"クイーン"こと横浜税関庁舎横を通って新港橋を渡る、という二通りのルートがあります。

新港橋ルートで新港埠頭に行くときに、みなと大通りから海岸通りを横切り税関庁舎脇を抜ける時に、税関庁舎の道路を挟んだ反対側に「横浜税関西門監所」という交番のような建物がビルの一角にあり、その脇の道路にはみ出した所に、写真の「横浜税関西門」と書かれた銅板がはめ込まれた門柱があります・・・・・・というよりありました(税関庁舎側にも門柱があったかどうかは記憶が定かではありませんし)。

横浜税関西門_c0247059_19222491.jpg
*1982年撮影(写真右手の入り口に赤灯があるのが横浜税関西門監所)


しかしよくよく考えてみると、件の門柱は税関庁舎の東側に建っているのに「西門」とはこれ如何に? 

実は1859年に横浜開港を機に、現在、日本大通りから海岸通りを渡った先の広場になっているあたり、80年代には東西上屋があった区画を柿渋が塗られた黒い板塀で囲って、その中に税関の前身である運上所が設けられ、その板塀の西側、現在、海岸通りにある昭和ビルの裏あたりに西門が、また現在の開港広場交差点のジャパンエキスプレスビルと貿易会館の間あたりに東門が設けられたことに端を発しています。

その後、明治政府発足に伴い運上所が税関に移行し、初代庁舎が一旦、現在の県庁の辺りに建設されましたが「海から遠くて不便極まりない」ということで、当時の県庁庁舎が火事により焼失したことをきっかけに、税関庁舎を県庁に譲り、税関庁舎はかつて運上所のあった場所、日本大通りの突き当たりの真正面に移動しました。

そして運命の1923年(大正12年)。
関東大震災により二代目庁舎が完全に崩壊。

この時、税関庁舎再建よりも港湾施設再建が優先された為に、税関庁舎は万国橋を渡った右側の新港埠頭内にあった税関敷地に仮移転。

そして震災から11年後の1934年(昭和9年)にようやく現在地に"クイーン"と呼ばれるようになる庁舎が完成し、海岸通りも現在のように直線化された為に(震災前の海岸通りは現在の税関庁舎のあたりから海側に切れ込んで昭和ビルのあたりで再び現在のルートに戻っていた)、西門は税関裏に移動した、というのがこの門柱に関する歴史的背景のようです。

このことから震災前はレンガや石積みが、震災後はコンクリートが主要な建築材料だったことなどを考えると、この石積の門柱が建てられたのは必然的に1912年以前だろうということになります(←私が勝手に願望を言っているだけですのでお気になさらずに)。

これらのことから道路にはみ出して車線を塞いでいるにも関わらず、80年代にこの門柱が現存していたということは、昔の人はこの門柱の価値を充分に理解していた、と想像できます。

ところが現在、この門柱は撤去されてしまったようです。

確認の為に伝家の宝刀ストリートビューで確認してみても西門門柱は影も形も見当たりませんでした。

確かにあのような柱が道路側にはみ出して建っていたら車の通行の邪魔になるでしょうが、邪魔になると言ったら新港埠頭が港として活気に満ちていた80年代前半の方が遙かに邪魔になっていたはずですし、この頃には"近代遺産"などという言葉も感覚も無かった時代ですから、このような柱くらい壊そうと思えばいつでも壊せたはずです(実際、「邪魔臭い」という理由で、1979年頃に旅客ターミナルこと新港埠頭四号上屋を情け容赦なく取り壊して更地にして貨物置き場にしてしまった)。

それが写真のように80年代当時にも残されていたということに、当時の関係者の方々には「この門柱は残すんだ」という明確な意志があったのではないでしょうか???

少なくとも私にはそう思えます。

それにこの程度のモノを保存するのに、いったいどれだけの手間暇が掛かると言うのでしょう???

この門柱を保存することよりも撤去することを選択した人たちの、その感覚とセンスに私は首を傾げざるおえません・・・・・・という、済んでしまった話を蒸し返すのはここまでにして、「西門があるのなら東門はどこ?」と疑問に思うのは至極当然のことだと思います。


*追記
この税関西門の門柱は、下の方を切断して短くなった形で新港埠頭旅客ターミナル入り口門柱として再利用(?)されています(でもどこにもそのことが書かれていないのはなぜ???)




by yokohama80s | 2012-09-16 00:06 | 新港埠頭


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