昔は、今と違ってタグボートの出力が小さかった為に、潮や風に船体が流されて出入港時に船が岸壁に接触したり、はたまた夜間や濃霧時に船が岸壁先端に衝突するという事故が後を絶たなかったそうです。
するとモノがモノだけにお互いタダで済むワケもなく・・・・・・ということで、防衝堤または防衝体、はたまた防衝工と称する車で言うとバンパーみたいなモノが岸壁先端に設置されるようになったそうです。
しかしいろいろと調べてみると、本来、防衝工と呼ばれるモノは、繋船した船が岸壁と接触して船体が損傷することを防ぐために岸壁に設置されたゴム状のショックアブソーバーのことを意味するようで、新港埠頭にある写真のタイプは「船体と岸壁が接触した時の衝撃を和らげる」というよりも先端部に灯台を設置して航行する船に対して岸壁先端の位置を知らせる役目で設けられたようです。
*夜になると支柱の先がピカピカ光る
新港埠頭では、もともと4号5号、8号9号岸壁の左右の突堤のそれぞれ左右両先端に2個づつの計4個の三角形のコンクリート製の防衝工が設置されていましたが、1944年に撮影された航空写真を見ると4号岸壁の防衝工があった場所まで4号岸壁が延長されているのが確認できることから、また9号岸壁の防衝工は、9号岸壁を延長する桟橋の設置により航空写真を見ると1957年から1967年の間に撤去されたようで、私が写真を撮影した80年代前半の時点では岸壁突端に設置されていた防衝工は、写真の8号岸壁と、5号岸壁の2カ所しか現存していませんでした。
*画面左、貨物船の奥に5号岸壁の防衝工がチラッと見える
その後、どうやら5号岸壁の防衝工も、右岸壁に海保の海上防災基地を建設する為に例によってコソッと取り壊されてしまったようで、現存する防衝工は8号岸壁のものだけのようで、この防衝工を文化遺産だか近代産業遺産だかなんだかに指定しようとする動きもあるそうです。
しかし80年代にはそのような歴史的価値など知るよしもなく、当時は「立ち入り禁止」「釣り厳禁」という看板があったにも関わらず↓
格好の釣りポイントとなっていました。
*写真はすべて1987年撮影